ふくしま集団疎開裁判のまとめ(要約版・詳細版)

当事者の主張と反論(要約版)
債権者(郡山市の小中学校に通う児童生徒たち) 債務者(郡山市)
論点 避難させるべき理由 論点 左の理由に対する反論
1、外部被ばく 申立書 (2011.6.24) 1、外部被ばく

  
準備書面(1) (20118.22)
外部被ばくだけを取り上げる。



(1)、空間線量の積算値 「郡山市豊田町」を基準点にして推計(甲1報告書
(1)、3月12日〜5月25日の積算値
 3.8〜6.67mSv
(2)、年間の積算値
 12.7〜24mSv
←反論(1)、測定値とその結果
本年6〜7月実施のモニタリング結果から、債権者らが通う各小中学校で、学校滞在中の被ばく量は、
 0.08μSV〜0.20μSV/時
学校滞在中の年間推計被ばく量は、
 0.13mSv〜0.16mSV
にとどまる。

←反論(2)、保全の必要性 ◎債権者と保護者には「転校の自由」があるのだから仮処分申立は却下すべし。

(仮に、被ばくの危険性が認められるとしても)
債権者らと債権者の保護者には、自ら安全と判断する場所に引っ越して転校する自由があるのだから、かつ郡山市はそれを妨害していないのだから、その自由を行使すればよく、仮処分による救済を求める必要性はない。

(2)、空間線量の積算値の見直し 最終準備書面 (20119.9)

より精度が高い「郡山合同庁舎東側入口付近」を基準点にして再度、推計(甲54報告書(2))、
(1)、3月12日〜5月25日の積算値
 4.3〜9.46mSv
(2)、3月12日〜8月末の積算値
 7.8〜17.16mSv

(3)、反論(1)(測定値とその結果)への再反論
◎右モニタリングは教職員に積算線量計を携帯させて測定させたもの。
しかし、子供が校庭で過ごす時間帯も教職員はコンクリートの校舎内で過ごすことが多く、子供の被ばく線量を正しく反映しない。
実際、NHK・ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図3 子どもたちを被ばくから守るために」 (8月28日)で、郡山市北の二本松市で、子供に積算線量計を携行させ測定した結果、1週間の積算値は、
中学生の兄 73μSv
小学生の妹 65μSv
1時間あたりに換算すると、
兄 73÷(24×7)=0.43μSv/h
妹 65÷(24×7)=0.39μSv/h
で、右モニタリングの値より2〜5倍以上も高い。

◎債権者の親が学校の校庭で自主測定した結果
債務者の測定結果より3倍(アスファルトの道)、10倍以上(土手にある木の根元)も高くなった(甲63報告書)

◎三郷市の親が学校で自主測定した結果
《市の値よりもおおむね3〜5倍は高い》ものだった(甲52陳述書)



仮に、右モニタリング結果を前提にしたとしても、債権者らが年間で被ばくする積算値を推定した結果は
2.5〜6.3mSV


(4)、反論(2)(保全の必要性)への再反論
1、債権者らは自由権と同時に、社会権として教育を受ける権利を有し、郡山市民として債務者に対し公教育を受けることを要求する権利を有している。それゆえ、債権者らが郡山市に対し教育を受けることを希望するとき、この要求に応え公教育を実施することは郡山市に課せられた憲法上の責務であり、その責務の一環として、安全な場所で郡山市の公教育を実施することも当然含まれる。
憲法上の社会権に由来する債務者に課せられたこの責務は。自由権としての「転校する自由」があるからといって、それを理由に郡山市が免れるようなものではない。

2、債務者が口にする転校の自由を実際に行使することがどれほど困難を伴うものであるか、この自由は多くの勤労市民にとって「絵に描いた餅」にすぎない。
 債権者の親たちが自主的にでも避難しようと考えつつ、それができなくてどれほど苦しんでいるかについては、彼等がその心情をつづった陳述書(甲50〜51)、債権者の親たちと同様に子供を避難させるか否かで苦しんできた支援者の陳述書(甲52)を熟読されたい。
 これらを読むだけでも、現実に自主避難できるのは、経済的裏付け、親の転職先、親族の理解、子供本人の理解、適切な受け入れ先等の諸条件が揃った場合だけであって、実質的に見れば、「転校の自由」などなきに等しい。
 また、自主避難を決断した親も、決断できないでいる親も、我が子の健やかな成長を心から願いながらも、家族で避難した場合に経済的基盤を根底から失うことになる言い知れぬ不安、家族や周囲の無理解、友だちと引き離されることを悲しむ子供や新しい環境に不安を感じる子供に対する切なさ等から、その気持ちは千々に乱れている。



2、内部被ばく 最終準備書面 (20119.9)
10月7日までに反論予定
【総論】
現在、一部に「被ばくの事態は基本的に収束した」という雰囲気が存在するが、この考えの根底にある事実認識は、現時点における外部被ばくの測定値が徐々に低下している点に根ざしている。
しかし、「低線量被ばくの危険性」は現時点における外部被ばくだけで捉えることはできない。「低線量被ばくの危険性」を真にリアルに把握するためには、次の時間軸と空間軸の両面で、被ばくの危険性を吟味する必要がある。
@.時間的に、現時点における被ばくの危険性のみならず、3月11日以来のこれまでの放射能汚染の積算として被ばくの危険性を捉えること。
A.空間的に、外部被ばくのみならず内部被ばくの危険性を考えること。
そこで、以下、重要性の高い内部被ばくについて、これを3月11日以来のこれまでの放射能汚染の積算という観点から吟味する。具体的には、この間降下した放射性物質の集積の値を示す土壌の放射能汚染に着目して検討する。

(1)、チェルノブイリ事故との比較(1)−−健康被害−− ◎郡山市と汚染度が同程度の地域で、チェルノブイリ後に多量の健康被害が発生したことから、郡山市でも、今後、次のレベルで、子供たちの甲状腺疾病と甲状腺腫の発生が予測。
(1)、5〜6年後から甲状腺疾病と甲状腺腫の双方が急増し、9年後の1995年には子ども10人に1人の割合で甲状腺疾病が現れた。
(2)、がん等の発症率は甲状腺疾病の10%強の割合で発病、9年後には1000人中13人程度となった。

矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授の意見書によれば、ウクライナのルギヌイ地区は郡山市とほぼ同レベルの放射能汚染地域であり、同地区では、甲状腺疾病と甲状腺腫の発生について、チェルノブイリ事故以後、上の状況であると指摘する。
甲状腺のがん等は、通常であれば、子どもには10万人当たり数名しか出ないもので、異常に高い罹患率を示している。

 その上、債権者らが通う学校はいずれも、郡山市の中でもひときわ高い放射能汚染地域にあり(2校が郡山市全体の平均値の5倍以上、4校が平均値の2〜5倍以上。甲55の2汚染マップ参照)、その結果、債権者らが通う学校の地域では、ウクライナのルギヌイ地区で発生した低線量被ばくによる健康被害と少なくとも同程度か、或いはそれ以上の被害の発生が予測される。


(2)、チェルノブイリ事故との比較(2)−−健康被害2−− ◎ウクライナ政府の公式報告書(甲62)によると、チェルノブイリ事故により次のような健康被害の発生が報告。

《チェルノブイリ事故の影響を受けた0〜14歳の子どもたちの健康状態の統計データによって、事故後の数年間にわたって彼らの罹患率が1987年の455.4%から2003年の1,367.2%へと次第に増加していることが分かります。》(同62の2.79頁1〜6行目)
《被曝した子どもたちの中の健康な子の割合は減少しています(1986〜1987年の27.5%から2003年の7.2%)。一方で、被曝して慢性疾患を抱えた子どもたちの割合は増加しています(1986〜1987年の8.4%から2003年の77.8%)。その中で身体障害児の数はウクライナの平均人口レベルを4の倍数で超えています。最も懸念される変化は、強い甲状腺被曝をした青年たちと子宮内で被曝した青年たちに見られます。彼らの中の健康な青年の割合は3%以下に過ぎません>。》(同62の2.79頁下から11〜6行目)


(3)、チェルノブイリ事故との比較(3)−−避難基準−− ◎チェルノブイリ事故による住民避難基準に基づいて作成された郡山市中心部の「土壌汚染マップ」(甲55の2)
→これにより、債権者らが通う7つの学校のうち、
(1)、2校が移住義務がある移住義務地域(土壌汚染マップの赤丸)に該当
(2)、4校が住民に移住権がある移住権利地域(土壌汚染マップの水色丸)に該当



当事者の主張と反論(詳細版)
債権者(郡山市の小中学校に通う児童生徒たち) 債務者(郡山市)
論点 避難させるべき理由 論点 左の理由に対する反論
1、外部被ばく 申立書 (2011.6.24) 1、外部被ばく
  
準備書面(1)(20118.22)
外部被ばくだけを取り上げる。
なぜなら、外部被ばくだけでも、債権者らが通う学校の空間線量の積算値は既に1mSvを遥かに超えており(7.8〜17.16mSv)、現状のまま学校生活を送る中で、のちに放射線障害によるガン・白血病といった疾病を発症する可能性があるのは確実であり、そのため、彼らの生命・身体・健康という最も尊ぶべき人格的利益は今まさに重大な危険にさらされている。


(1)、空間線量の積算値 「郡山市豊田町」を基準点にして推計すると(甲1報告書
(1)、3月12日〜5月25日の積算値
3.8〜6.67mSv
債権者らは、外部被曝だけで、なおかつ積算にあたって木造家屋内の低減係数を0.6とし不当に低い数値を導く計算方法によった としても、75日間だけで既に年間許容量(1mSv)の3.8倍から6.67倍も被ばく。
(2)、年間の積算値
報告書(甲1)4頁表3の通り、
12.7〜24mSv
年間で許容量(1mSv)の12倍から24倍も被ばく。
 =>以上の計算の詳細

←反論(1)、測定値とその結果

本年6〜7月実施のモニタリング結果に基づき、債権者らが通う各小中学校で、学校滞在中の被ばく量は、
0.08μSV〜0.20μSV/時
である。
その結果、学校滞在時間(1日8時間)における年間推計被ばく量は、
0.13mSv〜0.16mSV
にとどまる(2頁)。

←反論(2)、保全の必要性 ◎債権者らと保護者には「転校の自由がある」

(仮に、被ばくの危険性が認められるとしても)
債権者らと債権者の保護者は、居住移転の自由(憲法22条1項)を有し、各保護者は、教育の自由の一環として、学校選択の自由を有している。
従って、債権者らと債権者の保護者は、債権者らがより安全と判断するその区域に住居を変更することにより、就学先学校を変更できるのであって、債務者郡山市は、かかる転校について、何ら妨げていないのだから、本仮処分の申立には必要性・緊急性が認められない。(5頁)
(2)、空間線量の積算値の見直し 最終準備書面 (20119.9)

より精度が高い「郡山合同庁舎東側入口付近」を基準点にして推計すると(甲54報告書(2))、
(1)、3月12日〜5月25日の積算値
4.3〜9.46mSv
債権者らは、外部被曝だけで、なおかつ積算にあたって木造家屋内の低減係数を0.6とし不当に低い数値を導く計算方法によった としても、75日間だけで既に年間許容量(1mSv)の4.3倍から9.5倍も被ばく。
(2)、3月12日〜8月末の積算値
7.8〜17.16mSv
事故直後から8月末までに既に年間許容量(1mSv)の約8倍から17倍も被ばく。
=>以上の計算の詳細


(3)、反論(1)(測定値とその結果)への再反論
◎右モニタリングは「児童生徒の行動を代表する」者として教職員を選び、積算線量計を携帯させて測定させた。
しかし、「子供」が校庭で過ごす時間帯も「教職員」はコンクリートの校舎内で過ごすことが多いのが実態であるから、右モニタリング結果は子供の被ばく線量の過小評価につながる。
実際、NHKの8月28日ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図3 子どもたちを被ばくから守るために」 でこれが明らかにされた。
上記番組は福島市と郡山市の間に位置する二本松市で、家族一人一人にポケット線量計を携行させ、積算の外部被ばく線量を測ったところ、小中学生の兄妹の外部被ばく線量の1週間の積算値は、部活動で野球をする兄は73μSv、バスケットボールの妹は65μSvとなった。1時間あたりに換算すると、
兄 73÷(24×7)=0.43μSv/h
妹 65÷(24×7)=0.39μSv/h
で、右モニタリングの値より2〜5倍以上も高い。

◎債権者の親が学校の校庭で自主的に測定した結果は、債務者の測定結果より3倍(アスファルトの道)、10倍以上(土手にある木の根元)も高い結果となっている。(甲63報告書)

◎ホットスポットで知られる三郷市の親が学校を自主的に測定した結果は《市の値よりもおおむね3〜5倍は高い》ものだった。=>その詳細(甲52陳述書)

仮に、右モニタリング結果を前提にしたとしても、債権者らが年間で被ばくする積算値を推定すると、
2.5〜6.3mSV
となる。
=>以上の計算の詳細


(4)、反論(2)(保全の必要性)への再反論
1、なるほど、理屈だけで考えれば、債権者らは自由権として転校する自由を有し、誰にも妨げられることはない。しかし、同時に債権者らは社会権として教育を受ける権利を有し、郡山市民として債務者に対し公教育を受けることを要求する権利を有している。それゆえ、債権者らが郡山市に対し教育を受けることを希望するとき、この要求に応え公教育を実施することは郡山市に課せられた憲法上の責務である。そして、その責務の一環として、安全な場所で郡山市の公教育を実施することも当然含まれるものであり、本件ではその責務が問われているのである。この憲法上の社会権に由来する債務者に課せられた責務は。自由権としての転校する自由があるからといって、それを理由に免れるようなものではない。

2、のみならず、債務者が口にする転校の自由を実際に行使することがどれほど困難を伴うものであるか、以下に述べるように、この自由は多くの勤労市民にとって「絵に描いた餅」にすぎない。
 現在、福島県の子供たちの間には鼻血、下痢、喉の腫れ等の健康不安が拡がっているが、福島第1原発事故以来、福島県の小中学生のうち県外の学校への転校を申し出た8753人の四分の三程度が「放射能による不安」を理由に挙げているという(甲60.福島民報本年8月24日記事)。放射能は万人にひとしく襲いかかるものであるから、放射能に対する不安も基本的に万人に共通である。従って、その陰には、条件さえ許せば県外の学校に転校したいが、許さないために不安を抱えながら今まで通りの学校施設に通っている膨大な数の子供たちがいるとみられ、債権者らもその中に含まれるのである。
 債権者の親たちが自主的にでも避難しようと考えつつ、それができなくてどれほど苦しんでいるかについては、彼等がその心情をつづった陳述書(甲50〜51)、債権者の親たちと同様に子供を避難させるか否かで苦しんできた支援者の陳述書(甲52)を熟読されたい。
これらを読むだけでも、現実に自主避難できるのは、経済的裏付け、親の転職先、親族の理解、子供本人の理解、適切な受け入れ先等の諸条件が揃った場合だけであって、実質的に見れば、「転校の自由」などなきに等しい。また、自主避難を決断した親も、決断できないでいる親も、我が子の健やかな成長を心から願いながらも、家族で避難した場合に経済的基盤を根底から失うことになる言い知れぬ不安、家族や周囲の無理解(それ自体、根拠のない安全宣伝をこの間繰り返してきた行政が作り上げてきたものである。)、友だちと引き離されることを悲しむ子供や新しい環境に不安を感じる子供に対する切なさ等から、その気持ちは千々に乱れている。だが、基本的人権もなかった戦時中ですら学童疎開が実行されたというのに、基本的人権の尊重を基本原理とうたう現代において、行政は未曾有の非常事態というべき人災(原発事故)で苦しんでいるひとりひとりの個人にそこまで犠牲と苦悩を背負わせるものなのだろうか。自分は我慢しても、未来ある子供たちだけでも集団的に避難して安全な環境の中で教育させて欲しいというのが、親としての切なる願いである。行政がもしこの切実な願いを受け止めることすらできないというのであれば、それは本来公共的な使命を果すことを使命とする行政の自殺にひとしい。
 以上のとおり、抽象的に債権者らに転校の自由があるからといって、保全の必要性を否定できるものではない。(7〜8頁)



2、内部被ばく 最終準備書面 (20119.9) 2、内部被ばく

10月7日までに反論予定
【総論】
現在、一部に「被ばくの事態は基本的に収束した」という雰囲気が存在する。
しかし、この考えの基礎にある事実認識は、現時点における外部被ばく(空間線量)の測定値が徐々に低下している点に根ざしている。
しかし、言うまでもなく「低線量被ばくの危険性」は現時点における外部被ばくだけで捉えることはできない。「低線量被ばくの危険性」を真にリアルに、アクチュアルに把握するためには、次のとおり、時間軸と空間軸の両面で、被ばくの危険性を吟味する必要がある。
@.時間的に、現時点における(微分的に)被ばくの危険性のみならず、3月11日以来のこれまでの放射能汚染の積算として(積分的に)被ばくの危険性を捉える必要がある。
A.空間的に、外部被ばくのみならず内部被ばくの危険性を考える必要がある。
すなわち、以上の【時間】と【空間】の4つの組み合わせを全て吟味して、初めて「現時点における低線量被ばくの問題」が明らかにされる。このうち、とりわけ内部被ばくに関する吟味が最も重要であるにもかかわらず、世の中ではこの問題を殆ど吟味していない。そこで、以下、重要性の高い内部被ばくについて、これを3月11日以来のこれまでの放射能汚染の積算という観点から吟味する。具体的には、この間降下した放射性物質の集積の値を示す土壌の放射能汚染に着目して検討する。


(1)、チェルノブイリ事故との比較(1)−−健康被害−− ◎郡山市と汚染度が同程度の地域で、チェルノブイリ後に多量の健康被害が発生→矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授の意見書
 矢ヶ崎意見書によれば、ウクライナのルギヌイ地区は郡山市とほぼ同レベルの放射能汚染地域であり、同地区では、甲状腺疾病と甲状腺腫の発生について、チェルノブイリ事故以後、次の状況であると指摘する。

《爆発事故(1986年4月26日)の5年後ないし6年後から甲状腺疾病と甲状腺腫の双方が急増し、9年後の1995年には子ども10人に1人の割合で甲状腺疾病が現れています。がん等の発症率は甲状腺疾病の10%強の割合で発病していて、9年後には1000人中13人程度となっています。実に多数の子どもが罹患しているのです。甲状腺のがん等は通常であれば、10万人当たり数名しか子どもには出ないものですが、異常に高い罹患率を示しています。》(甲49矢ヶ崎意見書4頁4〜9行目)

 しかも、債権者らが通う学校はいずれも、郡山市の中でもひときわ高い放射能汚染地域にある。
 文科省が本年8月30日に公表した「土壌の核種分析結果(セシウム134、137)について」(甲53)記載のデータによれば《郡山市内では118か所の測定を行っていますが、その単純平均値はセシウム137の濃度で99.67(kBq/m2)》(甲49矢ヶ崎意見書3頁7〜8行目)。これに対し、債権者らが通う (略) は、上記平均値の5倍の555 kBq/m2以上、 (略) は上記平均値の2〜5倍の185〜555 kBq/m2の地点のごく近隣に位置する(甲55の2汚染マップ参照)。
 すなわち、債権者らが通う学校の地域では、ウクライナのルギヌイ地区で発生した低線量被ばくによる健康被害と少なくとも同程度か、或いはそれ以上の被害の発生が予測される。



(2)、チェルノブイリ事故との比較(2)−−健康被害2−− ◎ウクライナ政府の公式報告書(甲62)による健康被害の報告→甲62の1同62の2ウクライナ政府公式報告書(抜粋)。
チェルノブイリ事故により次のような深刻な健康被害の発生が報告されている。

《子どもと若者と大人に対する放射性ヨウ素フォールアウト(放射性降下物)レベルと甲状腺がん数の関係が初めて示されました。これから数年間甲状腺がんの数が増加することが予想されています。》(甲62の1。69頁下から3〜末行)

そこで示された図5.2から、子どもと若者の甲状腺癌が事故後20年間に著増していることが読み取ることができる。
《子ども人口の健康状態の持続的な悪化は、チェルノブイリ災害による医学的影響によるものです。
チェルノブイリ事故の影響を受けた0〜14歳の子どもたちの健康状態の統計データによって、事故後の数年間にわたって彼らの罹患率が1987年の455.4%から2003年の1,367.2%へと次第に増加していることが分かります。非腫瘍性疾患も同様に増加している傾向があります(図5.1.11)》(甲62の2.79頁1〜6行目)
《被曝した子どもたちの中の健康な子の割合は減少しています(1986〜1987年の27.5%から2003年の7.2%)。一方で、被曝して慢性疾患を抱えた子どもたちの割合は増加しています(1986〜1987年の8.4%から2003年の77.8%)。その中で身体障害児の数はウクライナの平均人口レベルを4の倍数で超えています。最も懸念される変化は、強い甲状腺被曝をした青年たちと子宮内で被曝した青年たちに見られます。彼らの中の健康な青年の割合は3%以下に過ぎません。》(甲62の2.79頁下から11〜6行目)



(3)、チェルノブイリ事故との比較(3)−−避難基準−− ◎チェルノブイリ事故による住民避難基準に基づいて作成された郡山市中心部の「土壌汚染マップ」(甲55の2)
 チェルノブイリ事故においてソ連政府は、放射性セシウムによる土壌汚染の程度に応じて、住民避難の基準を定めた。
 この考え方を、福島原発事故、より具体的には債権者らが通う学校に当てはめたらどうなるか。
ア、まず、チェルノブイリ事故においてソ連政府が示した住民避難の基準とその内容は次の通りである。
1.避難(特別規制地域):土壌汚染密度の定義なし。
2.移住義務地域:55万5000ベクレル/m2(15キュリー/km2)以上。
3.移住権利地域:18万5000〜55万5000ベクレル/m2(5〜15キュリー/km2)。
4.放射能管理強化地域:3万7000〜 18万5000ベクレル/m2(1〜5キュリー/km2)。

イ、次に、債権者らの通う学校の放射性セシウムによる土壌汚染は、「土壌の核種分析結果(セシウム134、137)について」(甲53)記載の測定地点と測定濃度によれば、
@.(略1)学校
 セシウム55万5000ベクレル/m2以上の測定地点の近隣にある(測定地点と債権者らが通う学校を図で示したものが甲55の2の汚染マップ参照)。
A.(略2)学校
 セシウム18万5000〜55万5000ベクレル/m2の測定地点の近隣にある(甲55の2の汚染マップ参照)。
B.(略3)学校
 セシウム3万7000〜18万5000ベクレル/m2の測定地点の近隣にある(甲55の2の汚染マップ参照)。

ウ、結論
 その結果、債権者らの通う7つの学校は、チェルノブイリ事故における住民避難の基準に当てはめると、次のようになる。
@.(略1)2校は住民に移住義務がある移住義務地域に該当する。
A.(略2)4校は住民に移住権がある移住権利地域に該当する。
B.(略3)1校は放射能管理強化の放射能管理強化地域に該当する。

 周知のとおりソ連政府は国民の人権保障に極めて冷淡であったから、ソ連政府が出した住民避難基準は十分とは言えず、本来であればもっと厳しい基準でなければならない。その不十分な住民避難基準に照らしてさえも、債権者らの通う学校の殆どは「移住義務地域」か「移住権利地域」に該当する。人権保障を基本原理とする我が国において、債権者らをこのまま被ばく環境に置くことは本来、絶対に許されないことである。